【賢者は歴史から学ぶ】| お酒の経済学 | ②日本酒が持つ2つの顔

【賢者は歴史から学ぶ】| お酒の経済学 | ②日本酒が持つ2つの顔

前回の続きのようで全く異なる【日本酒】の話です。共通していることは、【新規免許が取得できない】ことくらいです。海外輸出量は年々増加している一方で、国内需要は変わらず減少しているという謎現象が起きています。

というのも、あなたは【日本酒】って聞くとどちらのイメージを持たれていますか?

純米吟醸、純米大吟醸、純米酒、国酒などの特定名称のお酒の銘柄などイメージを思い描きましたか?

それとも、コンビニでよく見かける紙パックに入ったお酒や居酒屋の飲み放題で出てくる頭痛くなるようなイメージされましたか?

どちらも日本酒ですが、国内外で人気になってきているのは前者の日本酒です。一方で国内需要が減ってきているのが後者の日本酒です。

今回のトピックは、日本酒に起きたイノベーションを振り返ると同時に今起きようとしているイノベーションについて説明したいと思います。参考文献は前回の焼酎に引き続いて『お酒の経済学』からです。なんとこのブログも見ていただいてました笑

①過去のイノベーション

イノベーションというものを定義すると、『複雑なもの(こと)を単純にするとしています。日本酒造りは水分を吸った大量の米を運んだり、菌のバランスを整えるために定期的に櫂入れを行ったり、造り始めてできあがるまでにかなりの時間をかかったりとかなりの長時間労働を強いられています。それを解決したのが『速醸法』による仕込みです。この仕込み方は、乳酸を添加するやり方です。この方法ができるまでは『生酛造り』が主流でした。

生酛造りと速醸の違いは、天然の乳酸菌を育てるのか、乳酸菌を人工的に添加するのか、というものです。味わいが全くことなるのですが、味や酒質をコントロールできるのは速醸です。この方法を用いることで、醸造期間を3分の1に短縮できるようになりました。この3分の1に短縮できることによって得られた効果は、より安く質のいい日本酒を飲み手に届けることができるようになりました。

日本酒の生産量は、高度経済成長とともに成長し、バブル崩壊とともに著しく減少しています。現在の生産量は幕末と同じくらいです。高度経済成長と現在でどう変わったのかを生産量で比較してみると、

1950年の出荷量

 ①兵庫県、②京都府、③福岡県

2012年の出荷量

①兵庫県、②京都府、③新潟県

となっています。いや、福岡!!ってなりますよね。九州=焼酎の方が圧倒的かと思いますが、福岡は日本酒の酒蔵が本当に多いです。ということは置いておいて、ここで見たいのはシェアです。1950年における兵庫と京都のシェアは合わせて19%くらいです。それが2012年になると、46%に増えています。
剣菱、月桂冠、白鶴等の名だたる酒造メーカーは全部このエリアにあるので納得ですね。大手が圧倒的に強くなっています。そこで発生したのが『同質化の罠』です。

需要と供給のバランスで大手酒蔵は他の酒蔵から日本酒を仕入れるという「桶買い」が行われるようになりました。今でいうOEMであり委託醸造というものです。さらに紙パックが流通するようになり、より安く提供できるようになりました。これにより、大手のお酒はどこも似たように味になってしまい、地酒としてのオリジナリティがなくなっていしまいました。そこで冒頭にお話ししたように日本酒のイメージが徐々に変わっていったのかなと思います。

②これから起きるイノベーション

今起きようとしているイノベーションが2つあります。

高級志向
輸出需要があるのは明らかにこちらです。日本酒の価値を上げていくことにフォーカスしています。私自身も大学院で研究していたのですが、値段(Price)と価値(Value)は同じようで違います。価値を高めていくと必然と値段が上がっていきます。代表的な価値を高めている2つの蔵があります。日本酒好きじゃなくても名前くらい来たことがある『獺祭』の旭酒造と『No.6』の新政酒造です。獺祭を例にしていくと、純米大吟醸、山田錦、熊本酵母で造るという機能的価値を高めて、自社商品の価値を高めていっています。一方で、新政の造りは、生酛造りです。伝統回帰し地産のものを活かすサステイナブルで意味的価値を高めています。どちらも『日本酒』というものに真摯に向き合っているからこそ辿り着いておられるのかなと思います。

新規参入
冒頭に記載した通り、清酒の製造免許は発行されておらず新規参入ができない状態です。それでも作れる日本酒があります。濁酒という濁り酒です。その他醸造酒という枠組みとなり日本酒とも呼べないのですが、米を使った醸造酒は作れます。有名なのが三軒茶屋に造ったwakazeと浅草にできた木花之醸造所です。造りての二人は新政酒造で修行した私と同じ1988年生まれという共通点のある二人です(笑)。自分の体感ではさらにすごい20代の日本酒マニアがぞろぞろいるので、若い人材が国の制度を変えていく力となっていくのかなとベトナムから見守っている次第です。

まとめ

自分自身もwakazeの稲川さんとたまたま出会ったことがきっかけで日本酒と向き合うようなりました。数十年以上変わらなかった業界が変わっていくのは一瞬ではなく日々の積み重ねで徐々に変わっていくものだと思います。自分たちも日本酒とベトナムに向き合うことで、SAKEを世界に、ベトナムの良さを世界に伝える役割を担うことができると信じて、やっていきたいと思います。

 

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